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パーキンソン病のリハビリ|自宅でできる運動や日常での工夫をご紹介

パーキンソン病のリハビリ|自宅でできる運動や日常での工夫をご紹介

更新日:2023年06月05日

公開日:2023年06月05日

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ストレッチをする男性

パーキンソン病とはどのような症状なのか、どのようなリハビリを行うべきかよくわからない方はいるのではないでしょうか。パーキンソン病には身体が固まりやすかったり、バランス能力が低下したりなどのさまざまな症状が現れます。それらの症状を予防・改善するには、ストレッチや筋力トレーニング、状態にあわせた動作練習などを行うことが大切です。この記事では、自宅でできるパーキンソン病のリハビリ内容や日常生活の工夫などについてご紹介します。パーキンソン病の特徴を理解することで、症状の進行をおさえつつ安全に自宅で過ごせるヒントを得られるでしょう。

パーキンソン病とは

診察風景

ここではパーキンソン病について解説していきます。

脳内の神経が障害される疾患

パーキンソン病とは、脳幹(中脳)にある「黒質」と呼ばれる神経の障害によって引き起こされる疾患です。黒質が障害されると、身体の動きをコントロールする「ドーパミン」という物質が減少します。ドーパミンの量が足りなくなることで、身体の動きに関する症状が現れるのが特徴です。

パーキンソン病は50歳以降に発症しやすい

パーキンソン病は50歳以降に発症するケースが多く、加齢とともに有病率は増えていくといわれています。パーキンソン病のほとんどは孤発性(遺伝以外の原因)によるものですが、まれに遺伝として現れるケースもあるでしょう。 明確な発症の原因ははっきりとしていませんが、現在ではパーキンソン病に対しての治療法が発展しており、症状の改善が期待できるようになっています。

パーキンソン病の代表的な症状

患者さんの肘と手首に手を添える男性

パーキンソン病の代表的な症状には、以下の4つがあります。

● 振戦
● 固縮
● 無動(寡動)
● 姿勢反射障害道

ここでは、その4つの症状を中心に詳しく解説していきます。

振戦

振戦は、じっとしている状態でも身体が無意識に規則正しく震える症状です。振戦は手足でみられる場合が多く、パーキンソン病を発症した初期は震える程度に左右差がみられます。手指の振戦では、親指と人差し指でものを丸めるような動きをすることがあり、それを「丸薬丸め運動」とも呼びます。身体を動かすことで手足の震えは軽減・消失しますが、その後に安静になると再び振戦が現れるのが特徴です。

固縮

筋肉が硬くなり、関節が動きにくくなる状態が固縮です。身体を動かすのが難しくなるので、動作や歩きのスピードが遅くなります。また、関節が動かされるときに一定の間隔で抵抗が強くなり、カクカクと歯車のような動きが現れるのが特徴です。固縮によって言葉を出すときや食べ物を食べるときに必要な筋肉が動きにくくなると、以下の障害が現れることもあります。

● 構音障害:うまく喋れない状態のこと
● 嚥下障害:うまく飲み込めなくなる状態のこと

パーキンソン病初期の頃は自覚症状が少なく、自分で気づきにくいケースもあるので、医師または第三者の確認が必要です。

無動・寡動

動きのスピードが遅くなることを無動(寡動)といいます。自分のイメージ通りに動くことが困難で、歩きや立ち上がりといった日常的な動作が遅くなってしまいます。また、歩き出すときに足がすくみ、足を一歩踏み出すことが難しくなるケースも多いでしょう。その他にも、書いている字が徐々に小さくなる、服のボタンをうまく着けられないなどの細かい動作の障害も現れます。

姿勢反射障害

反射的な動きがとれなくなり、身体のバランス能力が低下するのが姿勢反射障害です。バランスが崩れたときに姿勢の立ち直りが難しくなるので、転倒を起こしやすくなります。その他にも、以下のような影響が現れます。

● 歩いているときに止まれず、徐々に加速してしまう(突進現象)
● 歩行中に向きを変えにくくなる
● 姿勢が徐々に崩れてしまう

姿勢反射障害は、振戦や固縮などの症状よりも遅く現れることが多いといわれています。

その他の症状

パーキンソン病は代表的な4つの症状以外にも、さまざまな障害を引き起こすケースもあります。その他によくみられる症状としては、以下の通りです。

● 自律神経症状
● 睡眠障害
● 精神障害

パーキンソン病によって自律神経が乱れると、便秘や立ちくらみなどが現れる場合があります。自律神経症状によって興奮する神経である「交感神経」が優位になると、夜に眠れず睡眠障害を引き起こします。また、気力低下や抑うつといった精神症状が現れることも珍しくありません。これらはパーキンソン病とは関係のない症状だと思ってしまいがちなので、当てはまるものがあれば医師に相談し、治療を進めていきましょう。

パーキンソン病の方に行われる評価

カルテを書くお医者さん

パーキンソン病の重症度を測る評価には「ホーン・ヤールの重症度分類」があります。重症度分類では以下の表のように、パーキンソン病の症状をもとに5つのステージに分けられ、それぞれの日常生活の自立度の目安を評価できます。
重症度分類生活機能障害度
ステージⅠ(軽症) 
 振戦・固縮の症状が身体の片方だけに現れている
Ⅰ度 
 日常生活や通院にほとんど介助を必要としない
ステージⅡ 
 振戦・固縮・無動の症状が身体の両方に現れており、姿勢が明らかに変化している
ステージⅢ 
 明らかな歩行障害があり、姿勢反射障害がみられている 
 日常生活の動作にも障害が現れている
Ⅱ度 
 日常生活や通院に一部介助を必要とする
ステージⅣ 
 立ったり歩いたりなどの日常動作も難しくなる
ステージⅴ(重症) 
 1人での日常動作が困難となり、車イスや寝たきりの状態になる
Ⅲ度 
 日常生活のすべてに介助を必要として、自身だけでは立ったり歩いたりできない

パーキンソン病の治療方法

水と薬

パーキンソン病の治療方法としては、以下があげられます。

● 運動療法(リハビリ)
● 薬物療法
● 手術療法

基本的にパーキンソン病は運動療法と薬物療法を中心に治療を進めていきます。ここではそれぞれの治療方法について詳しく解説します。

運動療法(リハビリ)

運動療法では、リハビリによってパーキンソン病の症状の軽減を図ります。体力や筋力を維持・向上しつつ、硬くなった筋肉を緩めて関節の可動域を改善させることがおもな目的です。ガイドラインによると、リハビリによって日常生活動作の改善や歩行速度の増加などが認められたという報告もあります。 
リハビリは保存療法の1つなので、パーキンソン病の根本的な解決方法ではありません。そのため、運動療法によってパーキンソン病が完治することはないでしょう。しかし、早期の段階から症状の進行をおさえて、日常生活を安全に過ごすためには運動療法の継続は欠かせません。

 出典:8.パーキンソン病 理学療法診療ガイドライン

薬物療法

薬の服用によってパーキンソン病の症状を抑える治療法です。パーキンソン病では、以下のような効果を持つ薬を用います。

● L-ドーパ:体内でドーパミンに変化する
● ドパミン受容体作動薬:ドーパミンと類似した作用を持っている
● MOAB阻害薬:ドーパミンの代謝をおさえて効果を長引かせる 

パーキンソン病の薬はそれぞれ特徴や副作用が異なるため、症状にあわせた種類のものを服用することが大切です。また、パーキンソン病の症状が進行すると「ウェアリングオフ現象」や「オン・オフ現象」などが現れる点には注意しましょう。ウェアリングオフ現象とは薬の効果が短くなり、徐々に効かなくなってしまう状態のことです。オン・オフ現象とは、動ける・動けないときが周期的に切り替わることです。 これらの症状を防ぐには、医師と相談しながら適切な薬の種類と量を調整しましょう。

手術療法

薬物療法で症状のコントロールが難しくなった場合は、手術による治療を行います。パーキンソン病の代表的な手術には脳深部刺激療法(DBS)があります。DBSとは脳内に異常をきたしている部分に電極を埋め込み、電気による刺激を送ることで機能の改善を図る方法です。 組織をほとんど傷つけることなく、症状にあわせて刺激の強さを調節可能できる点がDBSの特徴です。DBSの適応条件には以下があげられます。
 
● パーキンソン病である
● ウェアリングオフ現象が現れている
● 薬による副作用が強く、薬物療法の継続が困難
● 70歳以下が望ましい
● 認知機能障害や精神症状が現れていない 

パーキンソン病のリハビリで行う内容

スクワットをする後ろ姿

ここでは、パーキンソン病の方におすすめのリハビリ内容とメニューについて解説します。

ストレッチ

ストレッチによって筋肉の柔軟性を高めて、関節の可動域の改善を図ります。パーキンソン病では固縮によって筋肉が硬くなりやすい状態なので、可動域が制限されると日常生活にも支障が出やすくなります。ストレッチの一種に「パーキンソン体操」という運動があるのはご存じでしょうか。ここではパーキンソン体操でよく行われる内容をご紹介します。
 
【顔のストレッチ】
● 口を大きく開けたり閉じたりする
● ほっぺに空気を入れて膨らませる
● 口をすぼめながら呼吸をする
 
【首のストレッチ】
● 首を前後に動かす
● 首を左右に倒す
● 首を左右に回す
 
【上半身のストレッチ】
● 両手を持ちながら上げ下げをする
● 両手でグーパーを繰り返す
● 両方の手首をぐるぐると回す

【体幹のストレッチ】
● 身体をゆっくり前に曲げる
● 身体を左右にひねる
● 壁に向かって両手を上について背筋を伸ばす
 
【下半身のストレッチ】
● イスに座りながら片足を伸ばして、ゆっくりと身体を前に曲げる
● 立った状態で片足を後ろに引いてアキレス腱を伸ばす

顔の筋肉をほぐしてあげると、こわばりやしゃべりにくさの改善も期待できるでしょう。

筋力トレーニング

パーキンソン病の症状によって活動性が落ちると、筋力低下をともなうこともあります。そのため、筋力トレーニングをして筋肉量の維持・向上を目指しましょう。筋トレ内容の例は以下の通りです。
 
【スクワット】
1. 足を肩幅程度に広げながら立つ
2. 膝の曲げ伸ばしをゆっくりと行う
3. 10回1セットとして、2〜3セットを目安に行う
 
スクワットは下半身全体の筋肉を鍛えられるトレーニングです。
膝を深く曲げすぎず、60〜90度の角度を目安にしておきましょう。
不安定に感じるときは壁や手すりなどの支えを用意して行ってください
 
【お尻上げ】
1. あお向けになって両膝を曲げる
2. お尻に力を入れながら上げる
3. お尻を上げきったらゆっくりと降ろす
4. 2〜3の手順を10回1セットとして、計2〜3セット行う
 
お尻上げは、身体をまっすぐにする働きがある「大臀筋(だいでんきん)」を鍛えられます。
 
【ドローイン】
1. あお向けになって両膝を曲げる
2. 息を吸った後、口で吐きながら腹筋に力を入れる
3. 3〜5秒間力を入れたら、力を抜く
4. 2〜3の手順を1セットとして、2〜3セット行う
 
ドローインは腹筋を鍛えるトレーニングです。
腹筋のトレーニングは姿勢の前傾予防につながります。

歩行訓練

パーキンソン病はすくみ足や突進歩行が起こりやすいので、歩行を改善するための練習が必要です。姿勢をまっすぐ伸ばしながら大股で歩いたり、リズムをとりながら歩いたりなどの工夫によって歩行の改善が期待できます。また、歩幅と同じ間隔のテープを床に貼り、視覚を頼りにしながら歩く方法も効果的といえるでしょう。

日常生活での動作練習

日常生活の動作がしにくい場合は、スムーズに行えるように工夫をする必要があります。症状にあわせて動作を変えてみたり、自助具をはじめとした外部のサポートを活用したりすることが大切です。たとえば、食事が難しいのであれば、スプーンや箸をうまく握れる自助具を試してみるのも良いでしょう。文字を書くときに字が小さくなるなら、点線やマスのある紙を使用して大きく書く練習をするのもおすすめです。

発音や飲み込みの練習

パーキンソン病は、無動や固縮によって構音障害・嚥下障害が現れる可能性があります。自宅でできるリハビリとしてはパーキンソン体操や発生練習、口・舌を動かす運動などがあげられます。構音障害や嚥下障害の症状が重く、日常生活にも大きな支障が出ている場合は、医療機関へ受診して専門的なリハビリを受けるのがおすすめです。

パーキンソン病の方が安全に自宅で過ごすための工夫

お手洗い

ここでは、パーキンソン病の方が日常を安全に過ごすためのポイントについて解説します。

廊下やベッドに手すりを設置する

パーキンソン病の症状によって転倒の危険性がある場所には、手すりを設置しておくと安全です。手すりの設置をおすすめする場所としては、以下があげられます。

● トイレ
● 階段
● ベッド
● 廊下
● 浴室

ただし、手すりを意識しすぎるとかえって身体が固まってしまう恐れもあります。依存しすぎないように注意し、身体の調子がいいときは手すりは軽くつかんでいる程度にしておきましょう。

床に目印をつけておく

よく移動する部屋・場所には、床の目印をつけておきましょう。目印を頼りに移動することで、すくみ足が軽減して転倒の防止につながります。 目印をつける例としては、以下の通りです。

● 廊下で歩くときは、線路のようにテープを貼り付けておく
● つかまる場所にテープでマークをしておく

このように、目印を参考にしながら動きをある程度固定化しておくと安定しやすいでしょう。

身体の調子にあわせた動きを心がける

パーキンソン病の方は、その日の身体の調子にあわせた動きを心がけましょう。さっきまで薬の服用で調子がよかったとしても、数時間後には症状が出現する場合もあります。症状が現れているときにムリに動こうとすると、転倒する恐れがあります。調子の良し悪しをよく確認して、どちらにも対応した動き方を覚えることが大切です。

外出時の注意点

外出するときは、目的地までの道のりや所要時間を事前に調べて、余裕を持った行動をとることが大切です。人混みのなかはすくみ足や転倒などが起きやすくなるので、なるべく避けることをおすすめします。どうしても避けられないときは焦らずに目標物を決めて、そこに向かって移動するように意識しましょう。

リハビリを継続してパーキンソン病の症状悪化を予防しよう(まとめ)

二つの人形とハートマーク

パーキンソン病は運動療法に加えて、薬物療法との併用によって治療を進めていきます。リハビリでは、ストレッチや筋力トレーニングに加えて、症状にあわせた動作練習なども行います。自宅のなかで転倒やすくみ足を防ぐためには、リハビリ以外にも部屋の環境を整えることも大切です。よく使う部屋には手すりを設置したり、テープで目印をつけたりして、自宅で安全に過ごせるようにしましょう。
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